夜中にふと星空を見上げ、一体どれくらいの星があるのかを考えたことがあるでしょうか。
また、宇宙に人間以外の生物がいると考えてワクワクしたことがあるでしょうか。
未だ見ぬ宇宙の彼方。それを見せてくれるのがSF映画の世界です。
宇宙の底知れなさ。果てしない探求心。そして、何があるか分からない恐怖心。
SF映画の醍醐味は、こういった感覚を存分に味わえることにあります。
名作であると共に、難解と名高いSF映画「2001年宇宙の旅」。
気軽な作品ではなく、見るのをためらっている人もいるかもしれません。
そでも、今もなお光り続けるには訳があります。
そんな「2001年宇宙の旅」を、作中のキーワード解説を兼ねてご紹介していきます。
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
映画「2001年宇宙の旅」とは?
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
「2001年宇宙の旅」は、スタンリー・キューブリック監督により撮影され、1968年に公開されました。
キューブリックの名前は、映画に興味がなくとも、一度は聞いたことがあるでしょう。
他の有名な作品としては、「時計仕掛けのオレンジ」や「シャイニング」、「博士の異常な愛情」などが挙げられます。
脚本を書いたのは、キューブリック自身とアーサー・C・クラークです。
クラーク自身有名なSF作家であり、今作を小説化したものだけではなく、「幼年期の終り」などが代表作です。
「2001年宇宙の旅」には、当時の科学的知識や技術がふんだんに盛り込まれています。
また、作中のインテリアなどは、いかにも近未来的です。
公開から50年余りの年月が経ってもなお色あせない、まさに古典SF映画の代表作と言えるでしょう。
2001年宇宙の旅はSF映画金字塔としての存在感
映画「2001年宇宙の旅」が制作されたとき、映像技術はまだまだ発展途上でした。
勿論、高度なSFX映像など作れるはずがなく、現在のような、迫力満点の派手な映像が撮れるはずはありません。
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
そんな時代に作られたにも関わらず、「2001年宇宙の旅」はSF映画の代表作、金字塔として名を残しています。
それは、一体なぜなのでしょうか。
公開当時はともかく、現在の評価は芸術性の高い「キューブリック作品」、という部分も関係しているでしょう。
しかし何よりも、「宇宙の底しれなさ」を描き切ったという点で、「2001年宇宙の旅」は他のSF映画作品とは一線を画しています。
宇宙は、人類の好奇心を掻き立てるものです。
見たこともないような生物がいて、植物が生えているかもしれません。
もしくは、人間の想像を超えるような、進化しきった何者かも存在するかもしれません。
全ては憶測の域を越えず、つまり、宇宙は「何があるのか分からない」のです。
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
「2001年宇宙の旅」は、派手なSFではありません。
むしろ哲学的で、確かに難解です。
それ故に幾度もの鑑賞に耐え、考察する楽しみが生まれます。
宇宙の底知れなさを描き、見る度に考える余地を与えてくれる。
そういったことが、「2001年宇宙の旅」をいつまでもSF映画の金字塔にしているのかもしれません。
映画「2001年宇宙の旅」のあらすじ
遥か昔のこと。
遠い人類の先祖であるヒトザルは、ただの獣でした。
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
しかしあるとき、ヒトザル達の前に真っ黒の石板が現れます。
この石板は、彼らに何らかの啓示を与えたようでした。
ヒトザルは武器を使うことを学び、長い時間をかけて人類へと進化していったのです。
時は流れ、人類は宇宙へ進出し始めていました。
そんな中、月であるものが見つかりました。
それはヒトザル達の前に現れた石板・モノリスでした。
モノリスの調査中、モノリスは強力な電波を発しました。
電波の行く先は、木星。
それから18カ月後、ディスカバリー号は木星探査に向かっていました。
乗組員はデビッド・ボーマン船長、フランク・プール、最新人工知能のHAL9000、そしてコールドスリープ中の3人でした。
映画「2001年宇宙の旅」のキーワード教えます
映画「2001年宇宙の旅」には、重要なキーワードがいくつかあります。
キーワードを知る事で、難解であっても少しは見やすく、より楽しめるようになります。
そこで、重要なキーワードをご紹介していきますので、鑑賞の際の参考にしてみて下さい。
そもそものテーマ「人類の進化」、そしてモノリス
映画「2001年宇宙の旅」の、そもそものテーマとは一体何なのでしょうか。
「未知との遭遇」、が代表的なものかもしれませんが、なによりも大きなテーマは「人類の進化」にあると言えるでしょう。
人類が何故進化してきたのか。
そして、これからどのように進化していくのか。
映画の冒頭部分では、延々とヒトザルの行動が映し出されています。
勿論、セリフはありませんし、説明文なども存在しません。
ただひたすら未開の大地の上で、生活するヒトザルたち。
ときには他の群れとの争いもあります。
そんなヒトザルたちの前に、急に現れたのが、真っ黒な石板・モノリスでした。このモノリスこそが、「2001年宇宙の旅」最大のキーワードでもあります。
モノリスの出現により、ヒトザルの群れには変化が起こります。
一匹のヒトザルが動物の骨を手に取り、「ツァラトゥストラはかく語りき」というクラシック音楽を背景に、周囲のものを叩き壊し始めます。
これが、武器の発見でした。
武器とは、つまり道具です。効率的に狩をし、自分達の身を守る術です。
人類は道具や火を使えるようになって、進化してきたと言われています。
動物の骨で周囲を叩き壊すヒトザルの表情、動きは、まさに獣から人類への「進化」を表しているのでしょう。
モノリスの影響は、ヒトザルたちだけに留まりませんでした。
映画の終盤、ディスカバリー号のボーマン船長は、モノリス、もしくはモノリスを作ったものたちによって、大きな変化を遂げることになります。
人類を超越した存在。
私たりの知る進化とは違いますが、やはり進化の一つの形態なのです。
作品内では、モノリスが具体的にどういうものなのか、という部分については詳しく触れられていません。
それ自身が意思を持つのか、もしくは、ただの道具であるのかも不明なままです。
しかし、人類の進化に一役買っているのは間違いなく、進化の起爆剤、促進剤と言えるかもしれません。
HAL9000
出典:https://www.amazon.co.jp/
映画「2001年宇宙の旅」には、高度に発達した人工知能が登場します。
それが、HAL9000であり、物語において圧倒的な存在感を放っています。
HAL9000は、ディスカバリー号の乗組員という位置付けです。
主人公たちのサポートと、船の管理を一手に担い、やってのけるスーパーマシンでもあります。
人工知能と聞くと、映画「エイリアン」のビショップや、「ターミネーター」のスカイネットなどが浮かぶ人もいるかもしれません。
これらは人間に害をなした、反乱を起こしたという点では、HAL9000と変わりません。
しかし、HAL9000とこれら2つには、大きな違いがあります。
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
ビショップやスカイネットは、あくまで本来の命令に忠実であり、それが故に人間と敵対しました。
HAL9000も、元々の使命に忠実ではありますが、より人間に近く、感情的であるように描かれています。
HAL9000は機械そのものの見た目をして、穏やかな男性声である話し方も、全く感情が込められていません。
特徴的なのは、赤く光るレンズである目の部分。
レンズであるため、何を考えているか分からない不気味さを醸し出しています。
そんなHAL9000が感情的であると考えられる理由は、HAL9000の最後にあります。
仲間を全て失ったボーマン船長は、HAL9000の活動を停止させることを決意しました。
HAL9000の回路を一つ一つ外していくとき、HAL9000は記憶の海の中へと潜っていきます。
それは、人間的な幼児退行の減少でした。
開発者への思いや、聴かされた歌の記憶。
そういったものを思い出し、やがては沈黙してしまうのです。
痛ましい現実の中に、微笑ましい記憶を見るようで、不気味でありながら心の痛む名シーンとなっています。
(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
HAL9000が反乱を起こした理由は、作中でははっきりと明言されてはいません。
映画作品だけを見て考えるのであれば、この感情の働き具合や人間臭さに理由があるのでしょう。
映画「2001年宇宙の旅」は、感覚的な違和感や不気味さが秀逸に描かれている
正体不明の生物に襲われる。
敵対的なエイリアンに侵略される。
どちらもSF作品の代表的なシナリオで、それぞれに恐怖感や面白さがあります。
しかし、映画「2001年宇宙の旅」は全く違った趣があります。
間違いなく面白い作品ではあるのですが、背景に流れる感情は恐怖よりも、不気味さや違和感とでもいうものなのです。
ヒトザルやボーマン船長の前に、突如として現れるモノリスは、強烈は違和感を放っています。
本来そこにあってはならないものが、目の前にある。
そんな違和感です。
不気味さの代表は、HAL9000の目でしょう。
赤く光る、感情の無い目。
レンズではあるのですが、それはもう「目」という言葉以外では表せないものです。
笑っているのに目が笑っていない、という人がときおり現れます。
こういった人は何を考えているのか分からず、不気味さを感じます。
HAL9000に感じる不気味さは、こういった種類のものなのです。
2001年宇宙の旅 まとめ 配信先
「2001年宇宙の旅」は、こういった言葉では言い表しにくい感情を抱く現象を、秀逸に表現されています
映像の美しさ、噛みしめがいのあるストーリーと相まって、余計に印象的な映画に仕上がっているのです。