第4回目となる「日本が誇る監督名作特集」。今回は2019年現在、今後内外での活躍が期待される次世代監督とその代表作を紹介してきます!
44歳で監督デビューも確かな演出力に脱帽!野尻克己『鈴木家の嘘』(2018年
長年、助監督を務め2018年『鈴木家の嘘』で監督デビューを果たした野尻克己を紹介します。
監督デビュー作にして豪華キャストが集結!野尻克己とは?
1974年生まれ。埼玉県出身。
大学卒業後、映像の世界へ。さまざまな監督の下、長年助監督を務めてきました。
松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクトの第6弾として製作されたのが、野尻初監督作となる『鈴木家の嘘』。脚本も本人が担当しました。
岸部一徳、原日出子、岸本加代子、大森南朋などの豪華キャストが実現したことから、脚本の完成度の高さが窺えます。また新藤兼人賞金賞やヨコハマ映画祭の森田芳光メモリアル新人賞ほか監督に贈られる賞も多数受賞しています。
遅咲きにして期待の新人監督。これからの活躍が楽しみです。
悲しみを乗り越えていく家族の物語『鈴木家の嘘』
(C)松竹ブロードキャスティング
『鈴木家の嘘』は、野尻の実兄の死をもとに書かれた脚本の映画化。
引きこもっていた長男が亡くなり、ショックのあまり倒れてしまった母を守るため、家族そろって嘘をつくことに。それぞれの思いを抱えながらも乗り越えていこうとする家族の物語です。
(C)松竹ブロードキャスティング
岸部一徳、原日出子など豪華俳優陣がそろう中、妹役に大抜釘されたのは木竜麻生。400名の候補の中から選ばれました。木竜は本作で東京国際映画祭やヨコハマ映画祭などの新人賞を受賞しています。
(C)松竹ブロードキャスティング
重たいテーマであるにも関わらずユーモアもたっぷり。そこに登場する人々を優しく見守っているような作品に仕上がっています。
映画の多様性を追求!深田晃司『淵に立つ』(2016年)
カンヌ映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞し内外で注目されている深田晃司を紹介します。
ニューヨーク映画祭にて。「宮本から君へ」が絶賛公開中の真利子哲也監督が「よこがお」ご鑑賞。宮本役が大評判の池松壮亮さん、「よこがお」でもまた違う顔を見せてくれてます。連帯記念写真を撮ろうとしたけどキメの前後の写真の方が良い雰囲気だったのでこちら。#池松壮亮 #宮本から君へ #よこがお pic.twitter.com/6j1QBOQjY2
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) October 8, 2019
映画のグローバル展開を目指す深田晃司とは?
1980年生まれ。東京都出身。
大学在学中に、映画美学校へ。その間自主映画を数本制作しつつも、劇団青年団の演出部に入ります。
次々と作品を発表し注目を集める中、2016年『淵に立つ』がカンヌ映画祭「ある視点」部門にて審査員賞を受賞。その功績に対して、日本では芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。
また、この作品は世界20か国での公開も決定し、グローバル展開を果たした日本映画となりました。2019年には日仏合作で『淵に立つ』の筒井真理子と再ダッグを組んだ『よこがお』も公開され、ますます活躍が期待される監督です。
(C)2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS
衝撃のラストシーンに賛否も!『淵に立つ』
(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMA
『淵に立つ』は深田晃司完全オリジナル作品。映画とはまた別の展開の同名小説も本人が書き下ろしました。
小さな工場を営み、家族3人で静かに暮らしていた利雄のもとに刑務所から出所したばかりの知人・八坂が突然現れます。行くところがない八坂を住み込みで雇う利雄に反対していた家族でしたが、徐々に八坂を信用していきます。その先に待ち受けていた真実とは……。
(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMA
タイトルの『淵の立つ』は、自身が所属する青年団の平田オリザの「人間を描くということは崖の淵に立って暗闇を覗き込むような行為だ」という言葉に影響されたとのこと。観客にも淵に立ってそれぞれの解釈をしてほしいということなのでしょう。
わかりやすい作品ばかりでなく、映画の世界だからこそ多様性を求めて止まない深田監督の想いがそこにありました。
(C)2016映画「淵に立つ」製作委員会/COMME DES CINEMA
自主制作映画がシネコン上映された奥山大史『僕はイエス様が嫌い』(2018年)
弱冠22歳の若き才能・映画監督の奥山大史を紹介します。
第66回シドニー映画祭での『僕はイエス様が嫌い』上映、大盛況のうちに終えました! pic.twitter.com/6DJflNkkon
— 映画『僕はイエス様が嫌い』 (@jesus_movie) June 17, 2019
22歳という若さで長編初監督にして海外で注目を集める奥山大史とは?
(C)2019 閉会宣言
1996年生まれ。東京都出身。
大学卒業後、映画美学校へ進み、自主制作映画を作り始めます。ミュージックビデオの監督や映画、CMの撮影なども手掛ける中、初の長編映画『僕はイエス様が嫌い』が、サンセバスチャン国際映画祭で史上最年少最優秀新人監督賞を受賞しました。
そして、海外での評価の高さに国内ではシネコンでの公開も決定し自主制作映画とは思えない展開に。昨今、『カメラを止めるな』の成功もあって映画の制作規模に限らず、大きな公開ができることになり、奥山大史監督もその波にうまく乗ることができたようです。
(C)2019 閉会宣言
奥山監督自身の経験をもとに作られた『僕はイエス様が嫌い』
『僕はイエス様が嫌い』は奥山大史の子供の頃の体験をもとに作られました。
小学校5年生の頃、仲の良かった友人が亡くなってしまい「死んだあとの世界はどうなるんだろう?」と思ったことがきっかけだったとのこと。
(C)2019 閉会宣言
その後も死後の世界など、いろいろ調べたといいます。
祖母と暮らすため、東京から家族と共に田舎へ引っ越してきたユラはミッション系の小学校に通うことになります。ある日、お祈りをしていたユラの前に彼にしか見えない小さなイエス様が現れ始め、ユラ自身が少しずつ変わっていくのですが……。
何気ないカットの積み重ね、子供たちの自然なしぐさ、どれをとっても新しいようで懐かしい。心のどこかにしみじみと伝わってくるような作品です。
(C)2019 閉会宣言
CMプランナー経験を活かし映画監督へ!長久允『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(2019年)
サンダンス映画祭ショートフィルム部門で日本人史上初のグランプリという快挙を成し遂げた長久允を紹介します。
ワタナベアニさん@watanabeani に撮っていただいた写真
たこ焼き食べたい! pic.twitter.com/mKk2Igm0GG
— ナガヒサ (@nagahisa) August 14, 2019
WE ARE LITTLE ZOMBIESをTUTAYADISCASで借りる
CMプランナーとしての顔も持つ映像作家・長久允とは?
1984年生まれ。東京都出身。
大学在学中に、バンタンデザイン研究所映画映像学部で映像を学びます。卒業後、電通に入社しCMプランナーに。
CMの世界でもカンヌ国際広告祭のヤングライオン部門にて日本人初の受賞を果たしています。また短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』でもサンダンス映画祭ショートフィルム部門で日本映画が初のグランプリを受賞しその才能を開花させました。
Copyright © MOON CINEMA PROJECT. All rights reserved.
そうして私たちはプールに金魚を、をTUTAYADISCASで借りる
長久監督は、広告出身であることを武器に自ら営業に赴いています。それはひとえに、「自分の作りたいように映画を作る」という作家性に重点をおいているからです。
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そうして私たちはプールに金魚を、をTUTAYADISCASで借りる
有名な原作でもなく、知名度のある俳優が主演でなかろうとも、いかに費用対効果のあるプロモーションができるかということを提案していったのです。作家性と商業主義という相反する考えを見事に融合することのできる新しい世代の監督といえるでしょう。
新時代の映像作家・長久允の放つ新感覚ムービー『WE ARE LITTLE ZOMBIES』
『WE ARE LITTLE ZOMBIES』は長久允のオリジナル脚本の映画化。
https://twitter.com/littlezombies_m/status/1067916110840754177
WE ARE LITTLE ZOMBIESをTUTAYADISCASで借りる
両親を亡くしても涙ひとつこぼせずにいた4人の中学生が、自らの心を取り戻すためバンドを組むことに。その名も「リトルゾンビーズ」。果たして彼らがラストに手に入れるものとは……。
本作で重要なファクターとなる「リトルゾンビーズ」の音楽をLOVE SPREADが担当。VoのRyotaは映画の完成を待たずして亡くなりました。
強烈なビジュアルインパクトから一風変わった作品に思えますが、実はシンプルな物語。それを奇才・長久がこれまで観たこともない唯一無二の映画に仕上げています。劇中のミュージックビデオの完成度の高さも話題となりました。本編ともに必見の価値ありです!
(2019年10月現在の情報です。詳しい情報は公式サイトでご確認ください。)