Netflixオリジナル映画を全力でぶった切る!『ビースト・オブ・ノー・ネーション』編

ビースト・オブ・ノー・ネーション(C)Netflix

人気作、話題作、有名作が目白押しのNetflix。しかし、既存コンテンツだけがNetflixではない!

数多のオリジナル作品も大きな魅力です!

そこで、本コラムではNetflixオリジナル映画からおすすめ作品をピックアップし、全身全霊でレビュー&おすすめしていきます!

「見たかった作品は全部見ちゃった・・・」「次に何を見るべきか迷う・・・」そんなあなたにお届けするコラムとなっていますので、是非是非、作品選びの参考にしてくださいね!

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衝撃のバイオレンス描写の連続!?「ビースト・オブ・ノー・ネーション」

今回ご紹介する「ビーストオブノーネイション」はNetflixにて2015年11月に配信開始された映画作品。まずはその簡単な概要をご紹介致します。

「ビースト・オブ・ノー・ネイション」のあらすじ

舞台は西アフリカ。六人家族の次男として生まれた少年アグーは、いたずら好きの快活な男の子。

豊かとは決して言えないが、友達に囲まれ、家族に愛された幸福な日々を送っていました。

そんなある日、政府軍と反体制組織の間で紛争が勃発し、アグーの住む村もその戦果に巻き込まれてしまいます。

母と妹とは生き別れになり、父と兄は政府軍に射殺され、自らも命からがら逃げ延びたアグーでしたが、政府軍の手から逃れたのも束の間、彼が辿りついたのは”指揮官”と呼ばれる男が率いる反体制組織の縄張りだったのです。

捕虜として捕らえられ、生き残る為に”彼ら”の一員として戦士になる事を強いられたアグー。同世代の少年達が銃を向けて彼を脅す中で、必死に戦士の心得を学んだアグーは気付けば反体制組織の少年兵となっていたのでした。

神に背く行為とわかっていながら、生き残る為に殺し、奪い、犯す事を余儀無くされた生活の中で、次第にアグーの心は壊れていくのでした・・・。

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子役の高い演技力に脱帽!

本作の主要な登場人物は、イドリス・エルバの演じる指揮官を除けば、皆小さな子供達。

まだ幼さの残る顔立ちの奥に、恐怖と不安を滲ませながら銃を携える姿には、とても子供とは思えない抜群の演技力が宿っています。

子供同士でじゃれ合うシーンでは、無邪気で屈託の無い可愛らしい笑顔を覗かせる反面、一度、戦場に出れば、殺し殺される状況の中で生き抜こうとする強固な意志を称えた表情を浮かべる。

撮影現場でどのような演技指導が行われていたのかは分かりませんが、これほど説得力のあるギャップを醸し出せる子役たちの演技力には目を見張る物があります。

子役による喫煙や暴力のシーンなど、私たち日本人の普段の生活ではなかなか目にする事のできないような描写も頻発するので、衝撃に弱い方は十分に注意して鑑賞した方がいいでしょう。

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不穏感溢れる演出に注目!

冒頭、アグーの住む村を政府軍が襲うシーンが繰り広げられますが、このシーンでの手持ちカメラを用いたドキュメンタリックな演出にはとても驚かされました。

まるでその場にいるかのような臨場感でもって、住み慣れた村が、営まれていた日常が破壊されていく様が描かれるのです。銃弾の弾着描写もリアリティが高く、その恐ろしさを遜色なく描いています。

この後に続くシーンの数々でも、こうした不穏感の演出は総じて高い水準で描かれており、監督キャリー・ジョージ・フクナガの確かな手腕を感じさせます。二時間超の作品ですが、常に緊張感が漂う抜群の演出力に注目してみてください!

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アフリカ的”戦争映画の再解釈!

戦争を題材にした映画は数多くありますが、中でもアフリカを舞台にした作品はまだまだ少ないのが現状です。

本作「ビースト・オブ・ノー・ネーション」では西アフリカを舞台に、政府軍と政治改変を目的とする反体制勢力の衝突が描かれている訳ですが、一口に戦争映画と言っても、何を要因にした戦争なのか、どこで行われている戦争なのかによって、その描写にもそれぞれ細かな違いがあります。

例えば、欧米圏の戦争映画でよく見られる入隊前の訓練や式典のシーンなども、アフリカを題材に描くとなると事情が少し変わってきます。

潤沢な資金や資材をもつ欧米の軍隊と違い、本作でアグーが所属する事になる部隊は、言ってしまえば殆どゲリラ組織のようなものです。

銃も弾薬も多くなく、訓練用の施設を持つわけでも無い彼らは、政府軍の手が及ばない山中を切り開いた土地に拠点を作り、木の棒を銃に見立てて訓練するなど、私たちが普段目にしているような戦争映画とは一味違ったシーンが登場します。

中でも、新兵訓練の最後に行われる儀式は、土着の信仰や風習が根強く残るアフリカ(勿論、近代的な都市や文化もアフリカにはあるわけですが・・・)ならではのシーンとなっていて、本作の重要な見所です。

アメリカ映画「フューリー(デヴィッド・エアー監督作)」などでも見られた、兵士としての覚悟を殺人によって示すよう促されるシーンは数ある戦争映画の中でも一際痛ましく、直後の主人公アグーの独白を含めて本作のトラウマシーン筆頭と言えるでしょう。

文化や地域の違いによって、戦争映画の描写一つとってみても、多様なバリエーションが見られる。とは言え、戦争という現実を前に、人が人である事が脅かされてしまう悲しみはどこであろうと共通の悲劇。

こうした多様な”違い”を穏やかに楽しめるような世界が訪れる事を願うばかりです。

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目を背けてばかりではいられない。世界を取り巻く現実。

先述したように本作の展開や細部の描写は正視に耐えない残酷な出来事ばかりです。

その時点で人を選んでしまう作品である事は間違いないでしょうが、本作で描かれている事は私たちが住んでいるこの世界で今も尚、実際に起きている事柄であるのは否定できない事実。

幼い子供がペンやゲーム機、ラケットではなく、銃を手に命の奪い合いを繰り広げている世界の現実に、せめて映画でだけでも触れて欲しい。

そしてどうすべきか、何が出来るのかを一緒に考えて欲しい。私は本作からそんな切実なメッセージを感じました。

勿論、戦争など無く、比較的恵まれた暮らしをしていたとしても、各々、日常の中でそれぞれの悩みや苦しみを抱えている事は皆同じだと思います。

誰もが日々生きていく事だけで精一杯な世界で、地球の反対側の人々に手を差し伸べるなんて事は殆ど、不可能に近いでしょう。ですが、せめて映画や本、ニュースを通して知っておくくらいは出来るんじゃないかと思うのです。

知る事で痛みや悲しみを余計に背負ってしまう側面は否定出来ませんが、裏を返せば、同じ世界で同居する人間の一人として、知っておく事こそが私たちに出来る最低限の責任の負い方なんじゃないかと私は思います。

常に命を問われるような極限の生活を余儀無くされている人々がいる中で、私たちは少なからずエンタメを楽しめる程度の余裕はあるのですから、少しくらい余分な痛みを背負ってもバチは当たらないんじゃないかとも思います。


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まとめ

生きていく上で、エンターテイメントは必需品ではありません。生命活動において娯楽の有無はさして重要ではないのです。

それでも、映像作品や文学が長らく存在してきた意味には、こうした「世界の現実に時折でも目を向けさせる効果」があるからなのではないかと、私は考えます。

バイオレンスやショックを描く意味。それは、私たちの住む世界にそうした現実が紛れも無く存在するという事を気付かせる為なのです。

定価で沢山の娯楽にアクセスする事ができるサービスを運用する裏で、こうした作品も忘れずに提供しているNetflixの生真面目な精神性を本作を通じて感じさせられました。

もし、これを読んでいるあなたが、今現在どんな作品を見ようかと思いあぐねているのなら是非、本作「ビースト・オブ・ノー・ネーション」を見て頂きたいと思います。

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(2019年7月現在の情報です。詳しい情報は公式サイトでご確認ください。)