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「四畳半主義者ノススメ」森見登美彦ワールドを味わおう!

本記事は作家、森見登美彦氏の小説を原作とするアニメ、「四畳半神話大系」、「夜は短し歩けよ乙女」を貴君らに啓蒙すると共に、我々”四畳半主義者”の思想を説くものである。これより先、一切の望みを捨てよ。途中退席は認めない!

四畳半神話大系イラスト/中村佑介 (C)四畳半主義者の会

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阿呆神、森見登美彦を称えよ。

森見 登美彦出典:P + D MAGAZINE

我々、四畳半主義者は無類の阿呆であるが、皆一様に敬虔な信仰心を持つ者である。

阿呆神、森見登美彦氏こそが我々の崇め奉る神。貴君らにはまず、森見登美彦氏について知って頂こうと思う。

阿呆神の歩み

森見登美彦氏は作家である。齢は満40歳。

大仏の御坐すは奈良の地に生まれ、光源氏の赤子時代もかくやと言うべきその愛らしさは地を、海を、空を慈愛の光で満たしたと言う。

京都の地で農学を学ぶ傍ら、心にうつりゆく詮無し事をそこはかとなく飽きることなく書き尽くり、2003年「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル大賞を獲得なされたのである。

そして2005年、我々、四畳半主義者の教典である小説「四畳半神話体系」を日の本の文学界に広く遍くお示しになった。

その後も2006年に「夜は短し歩けよ乙女」を発表し、翌年の山本周五郎賞を受賞するなど、精力的に活動し、今尚、我々に新しい作品を提供してくださっているのである。五体投地。

その作風は阿呆の極みである。京都の地を舞台に、勉学、運動、恋愛の全てに背を向けた”腐れ大学生”の生態を克明に綴るという、愚にもつかない青春小説が主であるが、しかしその面白さは無類である。

四畳半神話大系イラスト/中村佑介 (C)四畳半主義者の会

屈折し尽くしてアンモナイトの異常巻きのごとく捻くれた主人公の独白のおかしさもさることながら、阿呆も極まれりと言わんばかりの偏屈な登場人物の行いが物語を混迷に導いていくくだらなくも奇妙奇天烈な展開の数々。

謎の秘密結社が暗躍し、腐れ大学生がどうでもいい目的の為に奔走し、その中にちょっとしたファンタジーが顔を覗かせ、やがて一つの結末に集約していく。

描かれているのはもっぱら、恋に素直になれない男の悶々とした日々である。

他人を羨み、自らを蔑み、梅雨時の窓際のようにジメジメと瞳から結露を垂らしている男が、如何にして人生に向き合うようになるかという、古くからあるイニシエーションのお話だ。それ以上でもそれ以下でもない。意義深くも、別段新しくもない平凡なストーリーである。

だが、森見登美彦氏の小説の魅力とは、そんな一見平凡なストーリーの最中に嵩増しの如く散りばめられた与太話の断片が、物語の中で次第に結実していく事にこそある。

明らかに話の本質的には不必要に見える多すぎる登場人物や固有名詞の数々が、そこかしこで主人公とは関係なく京都の街に犇めき合い、彼らの勝手な営みが主人公の日々に波紋を伝わらせていく。

伝わった波紋が主人公に微妙な変化を齎し、積み重なった変化が物語をゆっくりと動かしていく。

言うなれば、ピタゴラスイッチ的な物語の遠回りだ。

この快感を我々の人生に置き換えるなら、「知ってる街の普段通らない道を使ったら、知ってる通りに出た」とでも言うような、些細な発見と気付きの喜びなのだ。

四畳半神話大系イラスト/中村佑介 (C)四畳半主義者の会

物語の技術には、サブプロットと呼ばれるものがある。

プロットというのは、物語の展開を箇条書きにした骨組みのような物で、ここでいうメインプロットとは、主人公が辿る葛藤と成長の道筋である。では、サブプロットとは何か。

それは、主人公には直接関係の無い、脇役達の葛藤や成長、行動の道筋である。

これらを活用する事で物語の構造を重層的にし、複雑性を加える事が出来るのであるが、阿呆神森見登美彦氏はこの技術の天才である。

想像してみて欲しい。どんなにシンプルでありふれた物語であっても、サブプロットの豊かさで面白おかしく語ることが出来るのであれば、

「バナナの皮を踏んで滑って転んだ」というだけのお話であっても、語り手の技術一つで如何様にも面白く出来るのである。

主人公が踏んだバナナの皮は誰が捨てたのだろう?そのバナナの皮の摩擦係数は如何程だろう?

そんなどうでもいい無駄な事を捨て置かずに物語に組み込んで行く貪欲な想像力が森見氏には宿っているのだ。流石は阿呆神である。

四畳半神話大系イラスト/中村佑介 (C)四畳半主義者の会

物語として決して大きくは無い、ともすれば3ページで終わりかねないようなありふれたお話を、回り道の景色の豊かさで魅力的に語っていく”無駄さの作家”。それこそが阿呆神森見登美彦なのだ。

我々、四畳半主義者の求めるライフスタイルの真髄、「手狭でシンプルで飾り気のない四畳半を、想像とアイデアで豊かな空間に変貌させる」も、森見氏のこうした語りの技術を模範として構成されている。

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四畳半主義者への登龍門

阿呆神の神通力が如何に意義”浅く”も魅力には溢れた物なのかは先述の項ですっかり理解して頂けた事だろう。ここからは、貴君らが四畳半主義者としての人生を歩んでいくに辺り、初心として振り返れる素晴らしき入門編の作品をご紹介する。心して読むように。

四畳半主義者の旧約聖書「四畳半神話大系」

インターネットに用意された楽園「Netflix」。

配信コンテンツには名作、傑作が数あれど、その界隈にひっそりと”ある作品”が配信されている事はあまり知られていない。

名を「四畳半神話体系」といい、どこぞの阿呆神なる神が作りたもうた作品であるという噂であるが、真偽のほどは定かではない。しかし、その面白さは無類である。

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京都の大学に通う三回生の男が主人公であり、彼の一人称は”私”である。名前はまだ、というか、最後まで(分から)無い。

大学入学当初、彼の目の前には薔薇色のキャンパスライフへの扉が無数に開かれていた、かのように見えた。

差し出されたあらゆるサークルの勧誘チラシに、黒髪の乙女との恋を夢想した彼だったが、気が付けば、他人の恋を邪魔し続けることに時間を費やして三回生になっていたのである。

なぜこんな有様になってしまったのだろうか?入るサークル、付き合うべき人間を間違えたに違いない。そう後悔する彼だったが、無数に存在する並行宇宙のほぼ全てにおいて、彼はうだつの上がらない灰色のキャンパスライフを謳歌しているのであった・・・。

四畳半神話大系イラスト/中村佑介 (C)四畳半主義者の会

毎話毎話、それぞれ異なる選択をした”私”の大学生活が描かれる本作だが、その全てにおいて共通して登場するキャラクター達の奇妙な魅力がクセになる作品である。

”私”の悪友であり、どの世界においても八面六臂の暗躍を見せる怪人、小津。小津が師と仰ぐ仙人っぽい留年学生の樋口と、その恋人?な酒乱の歯科衛生士、羽貫さん。

”私”の後輩であり、密かに思いを寄せている女性、明石さんなど、個性豊かな面々達が”私”の大学生活を翻弄していくのだ。

”私”がそれぞれの世界で所属するサークルも、それぞれ奇天烈な特色ばかりでウィットに富んでいる。

ダッチワイフを恋人にする潔癖症の男、城ヶ崎がリーダーを務める映画サークル「みそぎ」では、”私”と小津による城ヶ崎へのエグすぎる報復の顛末が語られ、大学を裏で操る秘密組織「福猫飯店」では、権力が極・極・極個人的な理由で腐敗して行くいい意味で小さなポリティカルサスペンスの裏で、”私”が人生を問い直す問答が語られる。

今にも倒壊しそうな増改築のキメラと化した、九龍城もどきの下宿「下鴨幽水荘」の四畳半に住まう”私”の彩り豊かな灰色キャンパス・ライフの数々を是非とも堪能して頂きたい。

四畳半は宇宙にあり、宇宙は四畳半にあるのだ。

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ハーメルン、京都の夜を行く「夜は短し歩けよ乙女」

夜は短し歩けよ乙女(C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

一人ある身はなんとせふ。京都の大学に通う”私”は後輩である黒髪の乙女に思いを寄せていた。

しかし、外堀を埋める為の”ナカメ作戦”(なるべく・彼女の・目に止まる)を実行している間に時間だけが過ぎて行く。

今宵こそは!そう決心して一大アタックを試みる”私”であったが、黒髪の乙女はさながら好奇心の暴走機関車のように京都の夜を進んで行ってしまうのだ。

繁華街を飲み歩き、古本市を練り歩き、文化祭を闊歩して行く黒髪の乙女に追いつくべく、”私”もまた、京都の夜を駆けずり回る。闇の古本売り立て会、学園祭のゲリラ演劇に突撃し、永久外堀埋め機関と化していた日々に別れを告げる為に・・・。

「四畳半神話体系」でも登場した樋口や羽貫さんなどのキャラクターも再登場。本作から新たに登場するキャラクターも皆、一様に変人だらけである。

猥褻と桃色を極めた破廉恥図書を収集する「閨房調査団」や、三階建の列車に住みながら京都の繁華街を支配する富豪、一目惚れした女性と再会するべく、パンツを履き替えない事を神に誓った男など、森見登美彦氏ならではの類いまれなる阿呆の想像力が炸裂しているのだ。

この風紀紊乱の世であろうとも、ここまで荒唐無稽で支離滅裂な魅力を持つ物語は他にないと断言できる。

「四畳半神話体系」でも描かれた偏屈人間達の織りなす不思議な物語は本作でも健在。

四畳半神話大系イラスト/中村佑介 (C)四畳半主義者の会

当たって砕けて芥になるのを恐れるあまりに行動を起こせない”私”と、対照的にさながらハーメルンか塊魂のような求心力でもって人々を引き連れて夜を往く黒髪の乙女。二人の歩みが交わるまでの雑多に過ぎる遠回りの面白さを、読者諸賢も是非とも味わって頂きたい。

貴君らは今、このコラムを読んで四畳半主義者になるべきか、ならざるべきかを迷っておられる事だろう。

しかしこれは好機なのだ。

人生を盛大に踏み外し、曲がりくねった精神を持つ森見ワールドの住人達を通して、貴君らの人生を問い直してみると良いだろう。他者の過ちから学ぶ事は多いのだ。その好機はいつでも貴方のスマホやPCに繋がっておりますぞ。はい千円。

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(2019年7月現在の情報です。詳しい情報は公式サイトでご確認ください。)